Taos Pueblo, Abiquiu
世界遺産となっているタオスプエブロ。入場料を支払い、お土産物屋さんとして開放されているプエブロ族の居住区の一部を見学できる。実際に生活されているお家があるエリアは立ち入り禁止になっている。
砂漠地方にある建物には以前から惹かれるものがあって、16年前に訪れたモロッコのザゴラという土地のキャンプ場で滞在をした際に古い居住用建物で見せてもらったシンプルな土作りの家、パンを焼くための窯を思い出す。
修復中の古い教会で、写真を撮らせて貰ってもいいですか?と前に立っていたネイティブの男性に聞いてみた。”いいけど彼らにチップをあげてね”とおっしゃった時に、その方がいいなと感じられたのでチップをお渡しして撮影させてもらった。そして初めに話した男性にも気持ちをお渡しすると意外そうな表情をした後、優しい笑顔で手を差し出されたので握手をした。あの時の力強くも優しい手が忘れられない。昔、働いていた映画館での舞台挨拶でのこと。当時ご存命だった緒方拳さんに舞台上で私がお花を手渡した時、緒方さんがしっかり私の目を見ながら手を差し出してくださって握手をした。あの時の温かい手に近かった。
遠くにいる弟さんの代わりに店番をしているというお兄さんがいた、あるお土産物屋さん。そこで気に入った古いシルバーのピアス(スプーンを加工したものらしい)と弟さんが撮ったという写真を購入した。素朴で温かい雰囲気が感じられて不思議と心が落ち着く場所だったので、少しお店のお兄さんとお話をした時間が思い出される。
タオスプエブロを後にしてオキーフの家を見学するためにアビキューに向かう途中、ナチュラルフードストアで買い物と昼食休憩をした。ここのデリでは、私たちに馴染みのない食べ物があって迷っていると地元の女性が親切に声をかけてくださって、タマレというトウモロコシで作られたチマキのようなメキシカンフードを食べることができた。食後、現地産の化粧品が沢山並ぶ棚の前でどれが良さそうか悩んでいると、また同じ女性が来ておすすめをサクッと教えてくれて去っていかれた。爽やかで素敵な方だったな。
そして、アビキューまではリオグランデ川沿いを走ったので川の近くへ少し立ち寄った。綺麗な石が沢山。川も美しかった。
いよいよアビキュー。オキーフが最後に住んでいたアトリエ兼住居へ。ここを知ったのは13年ほど前、自宅近くの図書館で何気なく本を見ていたところ、ふと手に取り大好きになった写真集からだった。写真家マイロン・ウッドによるオキーフの晩年の家が記録された “オキーフの家”。その時は彼女が偉大な画家ということも知らずに、凛として静謐な高齢女性の佇まいとこんなに美しい理想的な家での暮らしがあるのかと感銘を受けて、返却をしてはもう一度借りるほど虜になったので、後日Amazonで見つけて購入した運命的な写真集。行けるものなら死ぬまでに一度は直接行こうと思っていて、想定よりも早く2017年に叶えられたことは最高に幸せなこと。運転も旅も好きで好奇心溢れる夫のおかげである。
幸いサンタフェにあるオキーフミュージアムで今でも大切に管理されていて、サイトでツアーの事前予約をすれば見学をさせてもらえた。ガイドの女性が本当にオキーフを誇りに思っているんだろうなと感じられるほどポジティブな印象で、活き活きと説明をして案内をしてくださった。今でも地元の方達に愛されていることを知った時、すごく嬉しかった。見学はお庭からアトリエとお家の一部で、室内は写真撮影不可だったけど鮮明に覚えているアトリエ、キッチン、綺麗に整頓され保存されている美しい洋服や靴が並ぶクローゼット。キッチンのものはスパイスや箱ティッシュに至るまで昔のまま残されていた。ガイドさんによると一度全てを慎重に違う場所に移動して撮影をした後、元に戻したとのこと。お庭は地元の学生さんやボランティアさんが植物を育てて管理をしていて、四季折々に変化する様子をリアルタイムでミュージアムに設置されているモニターで確認ができる。場所が生きているのを感じられたことがとても印象深く素晴らしいと思った。
ここまで来たら旅の目的はほぼ終わったのだけど、憧れの土地ニューメキシコはまだまだ楽しませてくれたので続きます。
※《M》recomended by Moko
text & photo by Hisayo